ユニークなお酒-日本酒

気温が下がり、少しずつ秋らしさを感じる今日この頃。
夏の名残が遠のくと、不思議と日本酒が恋しくなります。

近年、日本国内での日本酒の消費量は減少傾向にあるそうですが、蔵元が丹精込めて造る日本酒は、海外ではますます注目を集めています。

さて、その日本酒の起源はどこにあるのでしょう。
日本で稲作が始まったのは今からおよそ2000年前。
お米を原料とした「口噛酒(くちかみざけ)」が、日本酒の原型といわれています。

「口噛酒」とは、口の中で噛み砕いたご飯を壺に吐き出し、自然発酵させて作るお酒。
この役割を担ったのは巫女で、唾液に含まれる酵素がデンプンを糖に変え、野生酵母が発酵を進めていきます。
当時のお酒は、どぶろくのような白く濁ったものだったのでしょう。
神様に捧げるために、清らかな祈りとともに造られていたのです。

奈良時代に入ると「造酒司(さけのつかさ)」という役所が設けられ、米麹を使った本格的な醸造法が広まりました。

麹を使う酒造りは、日本だけでなく東アジアにも見られます。
その目的は、穀物のデンプンを糖化させること。
ただし、麹の作り方と使う菌には大きな違いがあります。

多くの東アジアでは、生の穀物(麦や豆など)を砕き、少量の水で練って固め、自然にカビを繁殖させた「餅麹」を使います。
一方、日本では蒸したお米に黄麹菌(Aspergillus oryzae)を繁殖させた「ばら麹」を用います。
この黄麹菌は日本固有の菌で、日本酒造りに欠かせない存在です。

さらに、日本酒は「並行複発酵」という特別な発酵方法をとります。
同じタンクの中で、米の糖化とアルコール発酵が同時に進む——
この仕組みは世界でも非常に珍しく、日本酒が生きた芸術と呼ばれる所以です。

秋の深まりとともに、ゆっくりとお気に入りの一本を味わいたいですね。
静かな夜に、盃を傾けながら。

ブログに戻る